内部被曝を考察するブログ

2年近く前に骨折をしてから中断していた自転車通勤を再開しました。良い季節ですね。皆様がご健康でおられ、良い一週間でありますように。

補足的議論

イメージ 1

誤解されやすいポイント
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外向きK電流が重要となる心筋再分極相(phase 2)では、外向きK電流用のチャネル(KvLQT1)が、微細なタイミング・コントロールを行っている。その他のKチャネル(特に内向き整流型KチャネルKir)は、これを邪魔しないように、絶対に閉じてなければならない。(注1)

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K-channelには、いろんな種類のものがあります。 大きな電流を通すもの、小さな電流しか通さないもの、整流機能のあるもの、ないもの。いろんなon/offの仕方をするもの。




それから、細胞内外のK濃度勾配について。
もしかしたらご存知の方も多いと思いますが、細胞内=高カリウム濃度、細胞外=低カリウム濃度、となっています。
でも、電位のことを見ると、細胞内には逆に陰イオンが過剰となっています(図のAというのが、陰イオンを指します)。

Kチャネルが仕事をするとき、我々が理解しておかねばならないのは、ちょっと語弊もあり感覚的な説明になって申し訳ないのですが、濃度勾配と、電位勾配の2つのdriving forceがあるということ。

細胞内には、Kが多く、細胞外には少ない

だから、心臓の再分極時の外向きK電流、これは、KvLQT1チャネルがopenになれば、自然に、濃度勾配によって流れ出ていくだろう、というのは感覚的に分かってもらえると思います(図中のチャネルは、これに相当します)。

でも、別の見方をして、電位のことを考えてみます。実は、細胞内って、陰イオンが過剰で、電位的には、陽イオンを流れ込ませようとする方向も、また自然なんです。だから、内向きKチャネルなんてのもあって、(ある条件下で)自然に内向きにKを流すこともできるんです。(ここの説明は、本当は、正確にはKirなどに整流機能があるからでもありますが)。


上の方に述べた、KvLQT1対Kirの議論で、Kirがオープンで壊れたらどうなるか、という議論は、分かりやすく言うと、外にKを出そうと、みんなが頑張っているときに、ひとりそれと反対の行動をとって、全力でみんなの足を引っ張るチャネルがいたら作業が遅れるよね、という話をしています。
 
 
(余談)それから、これは近年わかってきたことですが、不思議なことに、Kirチャネルというのは、常にNav1.5というNaチャネルと挙動を共にしているのです。チャネルが生まれてから折りたたまれ、細胞膜に輸送され、役目を終えて分解されるまで、いつも一緒!大変不思議な挙動なのですが、心筋のイオンチャネルの開閉のタイミングを考えると、実に理にかなった挙動でもあることが分かります。そして、実は当理論を厳密に計算していく上で、この不思議な挙動が、イオンの流れを考えていく上で、とても大事な働きをしていると考えられます。詳しくは、後ほど議論してまいりたいと思います。補足記事1補足記事2補足記事3
  
2015年11月補足):趣旨は変わりませんが、ほんのすこし、厳密性を加味して、細かい表現を変更しました。Kirの整流機能と細かい挙動に関しては、別途の補足記事を参考にしてください。
(12/24/2019):細胞内外、特にKチャネル局所のKイオン、Naイオンの挙動に関し、説明を端折っていた箇所を補足しました。ご参考ください。
 (2/3/2020補足:注1):Kirチャネルの開閉に関しては、長らく、このチャネルが「リーキーチャネルだ」という古い考え方が支配的でした。2000年代初頭以降は、数々の新しい発見をもとに、このドグマはどうやら正しくなくて、Kirも厳密に開閉コントロールされているのだろう、という知見が蓄積されています。別項にて解説しています。