内部被曝を考察するブログ

2年近く前に骨折をしてから中断していた自転車通勤を再開しました。良い季節ですね。皆様がご健康でおられ、良い一週間でありますように。

はじめまして

原発事故後、ずっとセシウム内部被曝を理解しようと思考を重ねていました。直感としてはある程度の雑な考えの道筋は出きてはいたものの、最近になって、定量計算やいくつかの考え方のめどが立ちました。小さなことでも結構ですので、指摘・批判をいただけますと光栄です。

事後直後には、私も掲示板などで、Bandazhevskyのデータの紹介などをしたこともあったのですが、Bandazhevsky自身も来日され注意喚起をされておられたし、心ある識者は、すでにここに書いた以上の注意喚起を、継続的に頑張っておられ、自分がそれ以上、何かをどこかで発言するような必要性はないのかもしれない、と言う気持ちと、いや一方で、せめて、手の届く範囲でも、何か声を発しなければ、という考えと、福島の子供たちを思う気持ちと、逆に福島の農家の方たちの悲痛を思う気持ちで、複雑な思いを抱えていました。自分の考えの遅さもあり、なかなか、こうやって考えをまとめるに至って来ませんでした。

自分の手の届く範囲では、考えを伝えたり、議論をしたりしてきたつもりでしたが、この種の話と言うのは、原発事故後、本当に、話をしにくい社会的な複雑な状況というのがあるのを実感します。


いま、もしも仮に、目の前で多くの人が実際に人がバタバタと倒れ、セシウム内部被曝が一因だと強く疑われるのであれば、さらなる注意喚起の重要性に、誰も異論はないでしょう。

しかし、もしも、日本の穀物がそんなに汚染されていなくて、リスクが現実的に限りなく低いものであれば、逆に、社会不安を引き起こすことによるマイナスの影響というものが大きい局面というのを考えてしまい、出すべき声も出せなくなる状況というのもあるのでしょうか。私の友人も、個人的に注意喚起をしたために、知人に無用な不安を植え付け、家庭内に複雑な事情を抱えさせてしまったことがあったと、過去に後悔したことがあると言っていました。私も似たような体験が一度のみならず、あります。識者のだれもが、自分の考えをどこかで発しながら、それぞれに、いろいろ思うところのあった2年間だったのではないでしょうか。

ただ、昨今、取手の生徒さんの高頻度の心電図異常のニュースなどを耳にしました。

このニュースを聞いたときに、Bandazhevskyのデータの懸念が頭に浮かんだ方は、私以外にも多かったことだと思います。もちろん、私も、そういう懸念を抱きつつも、一方で、「もしかしたら取りこし苦労で、自然変動内の変化や、その他の要因の現れなのではないか」という、自分の中で、考えを否定する気持ちもありました(むしろ、懸念が外れていてほしい希望、にちかいというか)。

ただ、チェルノブイリ事故の時に、心疾患が4~5年目を境に増加した、という歴史があり、やはり、頭の中にある懸念と言うのを、なんらかの形で、ウェブサイトに記しておく必要があるかと思い、本日に至りました。

日本の穀物汚染の程度が、当時のウクライナベラルーシ穀物汚染の程度と比較して、どのくらい軽いのか、重いのか、同程度なのか、正確なことを把握しているわけではないので、低くあって欲しいな、取りこし苦労であって欲しいな、と希望的に祈るのみです。海洋汚染は別にして、陸地の汚染は、チェルノブイリよりも低い印象を持っています。穀倉地帯の汚染を比較するデータがあればいいのですが。。。

チェルノブイリで、心疾患が激増したことの、生物学的なメカニズムは、このウェブサイトに記していることを一つのストーリーと理解すれば、ある程度は納得なのですが、心疾患激増まで、事故から4~5年のタイムラグを要する、ということの理解に関しては、いくつかの可能性が考えられます。

1.原発事故から、汚染穀物収穫・流通(マス・プロダクションとしての、と言う意味で)まで、1-2年かかる。
2.このウェブサイトに計算した計算結果だと、低汚染穀物(政府の規制値のはるか下の20Bq/kgでも)を食べ続けると、発症濃度蓄積まで、1年半~2年かかる。
3.コンスタントに食べ続ければ、上記のように1年半~2年だろうが、人の食生活は、そんなにコンスタントに同じものを食べ続けるわけではないので、時には無汚染の食事による「休憩」がはいるだろうから、多くの人は、この2倍~3倍の時間が掛かるのかもしれない。
4.「なんか調子が悪い状態が続くなあ」と患者が医者に掛かろうと思うのに数ヶ月。似たような患者が増え始めて、「何か変だ」と医者が気が付き始めるのに、半年。合計約1年。

5.(追加事項:12/15/2019)セシウムなどの放射性汚染物質の多くは、不溶性の粉塵としてふりそそいたことが、現在では判明しています。環境中に放出された放射性汚染も、植物に吸収摂取されなければ、(食事からの吸収摂取という意味での)内部被曝への懸念は格段に低くなるのですが、この切り口での考察として、いままで識者からあまり議論されてこなかった点というのは、降り注いだ放射性汚染物質というのが、植物に吸収摂取されやすい形態であったかどうか、という点が、疫学的に極めて重要な切り口となってくることは、ごく普通の科学的判断として妥当な考察かと思います。つまり、不溶性の粉塵が、(環境中のバクテリアの働きや、土壌中のpHなど、各種の要因で徐々に)可溶化して、植物に移行するのに、時間差があるだろう、という推測ができます。実際、チェルノブイリの事故後の疫学調査で、土壌汚染の値と、健康障害の相関をしらべた調査がありますが、住民の硝酸・亜硝酸摂取の値と相関していたという報告があります。これは、私個人的には、硝酸摂取が人体に与えうる交絡因子の可能性以外に、土壌中の硝酸濃度は、その土地のバクテリアなどの環境と相関しているはずですから、降り注いだ不溶性放射線粉塵の、食物への移行に、なんらかの影響を与えていた可能性を推測しています。

このような組み合わせで、事故から数年を要したのかもしれません。今、ちょうど福島の原発事故から2年です。取りこし苦労であって欲しいな、と願っていますが、もし、4~5年目の心疾患増加に前もって対処できるとしたら、今のタイミングなのかな、と思っています。

あまり、よい事が書けない気もしますが、できうる限り、記してみたいと思います。

これまで、有形・無形の形で、私のつたない議論に付き合い、適切な批判とアドバイスを下さった方に感謝します。

沢山ある問題が、少しでも解決し、福島や近隣諸県の子供たち、関係者の状況が、すこしでも改善していきますようお祈りしています。

 

 

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12/15/2019:以前から可能性を議論しなければと思いながら、確固たる証左のない推測だったため、更新をためらっておりましたが、記事に少々考察事項を追加更新しました(セシウムの吸収性の変化に関する可能性への言及)