内部被曝を考察するブログ

2年近く前に骨折をしてから中断していた自転車通勤を再開しました。良い季節ですね。皆様がご健康でおられ、良い一週間でありますように。

メカニズム(カリウムチャネルに関して)

一般論として、放射性であろうが、放射性であろうが、セシウムという元素(Cs)が、生体内で、カリウムチャネル、という生命体分子にくっつき、影響を及ぼすのは、我々基礎医学者にとってみれば、常識中の常識で、日常的に、医学実験で頻繁に使う手法です。私自身も、原発事故前から、よく細胞に、セシウムを振り掛けていました。ただし、私などが日常的に使用していたのは、「放射性の」セシウムで、放射能をもっていないセシウムです(これをコールドのセシウムと言います)。一方、放射性のセシウム(Cs/134/137)のことを、ホットのセシウム、などと呼びます。

前置きが長くなりましたが、従って、原発事故後の放射能汚染でセシウムのことがニュースになった瞬間に、おそらく、多くの医学者が、カリウムチャネルのことに思いが至った事と思います。


放射能」と聞けば、多くの学者は、すぐにDNAの障害、と考えを馳せ、それはとても大事な考え方なのですが、生化学的には、放射線でDNA以外の生体分子がradiolysis(放射線による分子切断)を起こすのは、よく知られた実験事実なので、ここでは、タンパクである、カリウムチャネルにかんして、議論して見ましょう。

前置きに書いたとおり、カリウムチャネルが、何らかの形で影響をうけたら、どういう影響がでるのか?と、放射性セシウムと聞いた瞬間に、懸念するのは、自然な成り行きで、多くの学者が、カリウムチャネルの異常で起こる人間の病気、というものに思いを馳せたに違いありません。面白いことに、各種のカリウムチャネルの遺伝子変異や異常で、「QT延長症候群」という、ある大事な心電図異常がおこることが分かっており、逆に、QT延長症候群の多くは、カリウムチャネルの異常で起こります。

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<<他サイトからの転載>>



さて、問題はその先の考え方です。

この議論の結論を先に書いてしまいますが、「ごく微量の放射性セシウムで、ごく微量のカリウムチャネルが、オープンの状態で壊れる」というモデルが想定できる」ということです。

逆に、普通のセシウム(コールドのセシウム)では、クローズの状態にしているだけ
次回の議論で取り上げることなのですが、世の中の識者の中にはこの2つを全く区別していないために、「弱い化学毒性」と、「内部被曝毒性」の区別がつけられていないという考え方もあるかと思われます。


では、解説を進めていきます。目標は、放射性セシウムで、カリウムチャネルが、オープンの状態で壊れると予想される、というテーマの理解です。

では、続けて、カリウムチャネルというものにかんして基本的事項の解説をしたいと思います。

(1/24/2020補足)当然の事ながら、コールド(非放射性)セシウムと、ホット(放射性)セシウムがKチャネルに与える影響は、全く別であり、しかも、ホットなセシウムは、極微量でもシステム全体に機能異常を及ぼすということが定量的に導かれる、ということを、当理論では一貫して説明していますが、コールドとホットのセシウムの影響をごっちゃにして議論されたり、当理論を誤解されるかたがおられるようです。2015年に、このあたりの誤解(ホットとコールドの影響の出方に関する違い)に対する補足記事を用意しています。ご参考ください。

 


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