内部被曝を考察するブログ

2年近く前に骨折をしてから中断していた自転車通勤を再開しました。良い季節ですね。皆様がご健康でおられ、良い一週間でありますように。

カリウムチャネルにかんしての基本的事項の確認

同じ同族アルカリ金属元素のNaも、Kも、Csもデジタルな認識わけをできる、というのが、生命体の基本です。まずは、これを解説します。

元素表を見てましょう。
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(他サイトからの転用に手を加えました)

一番左にあるNaやKやCsは、「アルカリ金属元素」とよばれ、化学的性質や、物理学的性質が非常に似ています。

多くの化学反応においては、NaやKといった、同族元素はほぼ100パーセント置換可能な反応が多いのにもかかわらず、 「進化」の過程で、生命体の中の分子というのは、同族元素の認識わけができるようになった。これが、生物を理解するときに、化学や物理だけの知識では足りない、ひとつの所以です。


つぎに、なぜ、とりたてて、こんなことを解説しているのか?
それは、生命体の細胞にとって、NaやKというのは、とても大事な働きをしているからです。
生物の細胞は、細胞膜という脂質の膜で囲まれていて、ちょっと乱暴な言い方をしますが、電荷を帯びたイオンは、通常この膜を通過することはできない。

それでは面白くないんで、神様は、イオンチャネルという分子を設計してくださって、NaイオンやKイオンが、選択的に、細胞内外に、膜を超えて、行き来できるようになりました。(神様なんて言葉をつかっていますが、進化の過程で、そういう生命体分子を獲得した、ということです)
イオンチャネルというのは、特定のイオン(NaチャネルならNaイオン、KチャネルならKイオン、など)を、選択的に、細胞膜内外に通すことのできる通路のようなものです(下の図)。目的に応じて、自由自在にこの通路を開いたり閉じたりすることで、いろんな重要な機能を果たしています。

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(他サイトからの転用に手を加えました)

 
そのおかげで、細胞内外のイオン濃度勾配というものを創出できるようになりました。
言ってみれば、生命体の細胞が電池として機能することができるようになり、言ってみりゃ、電池の充電、放電を繰り返して、細胞は機能しているわけです。
 
で、その電池にの充放電に関わる、ひとつの分子について、説明&確認しておきたいと思います。
Kイオンを選択的に通す、Kチャネルというものに関してです。断面図を描くと、次のとおり。真ん中のチャネルを通って、Kイオンが細胞内外に行ったりきたりします。いろんな種類のKチャネルがあります。
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(他サイトからの転用です)


まず、第一の重要事項。Kチャネルの面白い性質にかんして。

<<<KイオンがK-channelを通過するときは、抵抗ゼロ、時間ゼロで通過し、フリーの水分子に囲まれているときと挙動が変わらない>>>


K-channelの3次元構造解析で2003年にRod MacKinnonがノーベル化学賞をとってるんですが、
なぜ、彼の仕事があそこまで評価されているか、というと、
前にも書いたように、NaイオンとKイオン、これは(CsとKの類似と同じように)同族アルカリイオン金属で、 物理的にも化学的にも、ほぼ100パーセント置換可能な反応が多い、ごく似通った元素であるにもかかわらず、 生命体のK-channelは、絶対にNaイオンを通さない。Naイオンのほうが、サイズが小さいにも関わらず、です。

これを、K-channelの「高い選択性」と言います。

一方、Kイオンは、フリーなポアと同じようにこのチャネルを素通りできる。抵抗ゼロ、時間ゼロで通過します。
これを「高い通過性」と言います。

この、どう考えても、矛盾してしまう「高い選択性」と「高い通貨性」をいう設計要求を、如何に生命が達成することができたのか、 その難問に答えたのが、MacKinnonの仕事です。

もう少し、詳しく書いてみることにします。

生体内のKイオンは、細胞内にあるとき、ほとんどの時間、8個の水分子に囲まれて過ごしています。
その水分子も、ゆるーい、「水素結合」で、Kイオンを囲んでいるだけ。

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(他サイトからの転用に手を加えました)


一方、KイオンがK-channelを通過するときの挙動に関して。
Kイオンは、抵抗ゼロ、時間ゼロで通過していく。なぜか?
K-channelの開閉部、イオン選択部にある アミノ酸の3次元構造上でのチャージが、8個の自由水分子にKイオンが囲まれていたときと全く同じ配列だから。

Kイオンにしても、何にしても、イオンチャネルを通過する際に、それまでまとっていた、自由水分子を「脱ぎ捨てて」、イオンチャネルの構成アミノ酸残基側鎖のチャージを「身にまとう」ことになっています。

だから、この、イオンチャネルの構成アミノ酸のチャージのピッチが、完璧に、自由水分子のピッチと一致していないとまずいわけです。

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(他サイトからの転用です)


では、よりサイズの小さい、Naイオンは、このKチャネルをくぐれるのだろうか?
Naイオンの自由水分子の配列を比較してみましょう。先ほどと同じように、上から見た図です。

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(他サイトからの転用です)

ごらんのように、ピッチが違います。
これが、Naイオンが、サイズが小さいにも関わらず、Kチャネルを絶対にくぐることの出来ない理由です。
実際に、無理にNaイオンとKチャネルを混ぜて、その3次元構造をしらべると、イオンチャネルが「虚脱」して潰れてしまうという結果が分かっています。

まあ、この辺は、英語に自信のあるかたは、実際のMacKinnon先生のレクチャーを視聴してみてください。生命体分子の面白さに、感動すること請け合いです。
http://www.nobelprize.org/mediaplayer/index.php?id=550

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(他サイトからの転用です)

 


では、問題のセシウムはどうでしょうか
もう、予想のついている方も多いとは思いますが、それは、後ほど述べます。

 


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