内部被曝を考察するブログ

2年近く前に骨折をしてから中断していた自転車通勤を再開しました。良い季節ですね。皆様がご健康でおられ、良い一週間でありますように。

メカニズム(現代核物理学の中のユニークな現象)

現行の放射線障害理論の背景にある物理学法則として、どの各種から出ようが、α線α線β線β線γ線γ線で、それぞれの放射線の電離能の強さこそが大事で、これによって、ターゲットに与えるすべての影響がきまり、どの元素、どの各種から出る放射線かは、一切関係ない、というドグマがあります。

つまり、カリウム放射性同位体であるK40から出るβ線も、セシウム放射性同位体であるCs134/137から出るβ線も、多少のエネルギーの差こそあれ、全く同じβ線であり、生物に与える影響は、まったく変わらない、という主張です。

ここでは、その他の可能性を、考えてみたいと思います。
簡単に結論を書きますと、「内部被曝として考える際には、カリウム40 (K40)は、全く無害。内部被曝量にカウントする必要すらない。一方、セシウム(Cs137/134)は有害、というゼロ・イチというデジタルな差がある」という可能性が、考えられる、というテーマです。

現行の理論を信じている方には、強いアレルギー反応を起こす考え方だとおもいます。
ひとつひとつ、丁寧に解説してみたいと思います。


まず、私が述べておかねばならないのは、現行の核物理学法則というのは、放射性元素が「気体」のときの観測・実験データをもとに、理論が作り上げられていて、放射性元素が固体中に、堅く固定されているときに崩壊をおこしたときに、どのような挙動をとるのか、また、その際の周囲の原子・分子に与える影響はどのようなものなのか、というのは、ほとんど手付かずの分野である、という点です。

手付かず、と申しましたが、じつは、ほんの少しだけ、とても面白い現象が分かっています。
Moesbauerというドイツの学者が発見したメスバウアー効果、メスバウアー現象というものが知られています。
付記に少し解説をしておきました)

イメージ 1
(他サイトからの転用です)



γ線核種が、足場のない自由空間でγ崩壊を起こすと、崩壊後の原子核は、反跳エネルギーで運動エネルギーを獲得し、熱エネルギーとして消費して、それでおしまい。

出てきたγ線も、反跳エネルギー分減少しています。同じ核種の原子核が近くにあっても、γ線がそのターゲット原子核をヒットする際にも、反跳エネルギーをロスしますから、これを再び励起することはありません(エネルギーが少なくなっているから、原子核を励起するに足りない)。

ところが、線源側、ターゲット側の原子核が、固体(結晶)に固定されていたら、反跳エネルギーをロスすることは無く、ターゲット側は結晶全体がエネルギーを吸収します。γ線で共鳴現象が起こっているわけす。結果的に見れば、線源が固体中に固定され、ターゲットが固体中に固定されていれば、原子核から原子核へ、γ線エネルギーを系の外に出さないで、エネルギーの伝達が行われている確率が存在する、と解釈できる、ユニークな現象で、通常の気体状の原子核をモデルとした原子核物理学の、それまでの古典的な核物理学の観察現象などからは逸脱した挙動です。

通常の、気体のときの放射性元素の崩壊が、自由空間でγ線をだし、自由空間でターゲットをヒットするモデルでは、γ線共鳴は、物理学法則からは起こり得なかった。ところが、線源もターゲットも固体中に固定されていれば、ユニークな現象が実現した。

この共鳴現象は、メスバウアー分光、として、元素のスペクトル解析として、広く応用されています。


次項では、この、「原子核が堅く固体中に固定されたときに示す、非線形的な挙動」の例である、メスバウアー現象に助けをかりて、生命体内での、K40と、Cs134/137の挙動の違いについて、理解を進めてみたいと思います。





雑感ですが、この分野は、まだまだ、その他の条件で線源やターゲットが固定されていたときにどのような挙動になるのか、とか、近接固体中に線源とターゲットが隣接存在したら、さらにどうなるのか、とか、共鳴のために原子核励起エネルギーが金属原子のようにそろっていない場合たとえば有機化合物結晶ではどうなるのか(特に隣接時)、観測時にはスペクトルの特定波長成分がしっかりと変化しなければ検出できないため共鳴というパターンでのエネルギー伝達のみ理論化されているかもしれないが波長がそろわない不規則なエネルギー伝達はないのか(特に近接時には)、β核種ではどうなるのか、特に隣接時に波動性質よりも粒子性が高くなると共鳴を飛び越して近接分子破壊が効率よく起こる可能性はないのか、ニュートリノでは、とか、いろいろな興味は尽きない思いを個人的には抱いています。

残念ながら、今の放射線医学の教科書的理論に使われている核物理学法則のモデルは、線源も、ターゲットも、フリーの空間での挙動を想定しています。実際には、放射性物質は、元素として生体細胞内に取り込まれるような場合には、生体内分子と、さまざまな結合、相互作用をしているのは当然で、少なくとも、薬理学的実験から、それぞれの核種の元素が、どの生命体分子と結合するか、ということは、ある程度予想がついているわけです。したがって、ある種の内部被曝では、言ってみれば、線源とターゲットが互いに固定され、しかも隣接しているという条件が成立しているわけです。


雑感が長くなりましたね。

 

 

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(2013年後半頃:追加補足)結局、ある程度の考察を終えて見返してみると、次々々頁に述べていることなのですが、
(1) 線源とターゲットが互いに堅く固定(含む:その固定時間)
(2) 近接(隣接)
(3) 放射性元素の崩壊時に起こる配位座の変化
などが、今までの放射線医学、放射線障害理論で扱われてこなかったパラメータで、これらが、放射性元素の「物質」としての生命体分子への影響を考慮する際に本質的になって来る条件なのでしょうね。物理学以外に化学や生化学的な見方が必要だという観想を抱きました。さらに、その生命体分子異常が臓器ひいては個体にどのような影響を及ぼすか、という部分は、生化学・生理学・解剖学・内科学など、多岐にわたる考察が必要だった、という感想です。
以下では、この、物質としての、放射性元素の影響を論じて行きますが、放出された放射線による影響に関しても、医学的な見地からは、現行の理論に関しては、少々議論しておかねばならない点が多くあり、後ほど議論してみたいと思っています。
やはり、従来理論の、物理学オンリー、しかも特定の条件のみの物理学理論だけで成り立った旧来理論では、リスク見積もりが正確に行われているかは、非常に不確定と言わざるを得ないと思っています。